Ambroxan と Ambrox その2
先週、AmbroxanとAmbroxについて話しましたが、その二つの香料の違いについて、パフューマー(調香師)クリストフ ロダミエル/Christophe Laudamielが説明してくれた内容をまとめてみましょう。
ここに、C16H28Oという同じ分子式を持ちながら、構造が異なる二つの分子があるとします。ひとつをDと呼び、残りの一方をLと呼ぶことにしましょう。DとLはともに香料分子であり、似たような匂いを持っているものと思われます(筆者は、Dの匂いを単独で嗅いだことがなく、クリストフはその点について触れませんでした)。クリストフ ロダミエルだけでなく、おそらく多くのパフューマー(調香師)は、Lの方が香料分子としての優れていると言うことでしょう。更に付け加えると、C16H28Oという分子式を持った異性体/isomer(分子式は同一だが構造が異なる分子、またはそのような分子からなる化合物を異性体)は他にもいくつかありますが(筆者がググッてみたところ17個出てきました)、香料として重要なのはこのDとLのようです。
すでに想像が付いた方もいらっしゃるかと思いますが、つまりこのDとLの違いが、AmbroxanとAmbroxの違いに関係してくるわけです。Ambroxanはその99%がLという分子で出来上がっているのに対し、Ambroxはその25%づつをDとLで分け合い、残りの50%は他の異性体/isomerで占められているそうです。先週も述べましたが、AmbroxanとAmbroxは非常に似通った香りを持ち、多分普通の人には区別がつかないのではないかと思われますが、正直なところその内容の違いには驚かされました。私が、DとLが似たような匂いを持っているのだろうと推測したのも、このようなことからです。
Ambroxanのストレートで強烈な印象というのは、その純度の高さから来るのだと思います。個人的には、Ambroxのどことなく「曇ったような」曖昧な部分がむしろ好きなのだという事をクリストフ ロダミエルに言ったところ、”make sense(それだったら、納得できる)”という答えが返ってきました。ジャック キャバリエ/Jacques Cavallierも同じような理由からAmbroxの方を好んでいるのではないでしょうか。
*補足*
AmbroxanとAmbroxの他に、Cetaloxというフィルメニッヒ/Firmenichの香料があるので触れておきましょう。クリストフ ロダミエルが以下のような二種類のCetaloxを教えてくれました。
Cetalox:およそ96%がDとLで占められている香料化合物。
L-Cetalox:99%がLの高純度の香料。Ambroxanと全く同じもののようですが、使われているL分子の製造法が違います。Cetaloxに使われているL分子は最初から最後まで完全に人工のプロセスで製造されているのに対し、Ambroxanで使われているL分子は、植物から抽出された香料を使って製造されるそうです。クリストフ ロダミエルによるとAmbroxanとL-Cetaloxが多少違う香りがするのは、残りの1%不純な部分の違いだそうですが、これは我々の鼻にはとても感じ取れるようなものではないのでしょう。
AMBROX (a registered trademark of Firmenich in International Class 3, 1979)
AMBROXAN (a registered trademark of Kao Corporation in International Class 1, 2007 – abandoned by by Henkel in 1984)
CETALOX (a registered trademark of Firmenich in International Class 1 and 3, separate filing in 1994 and 2006)
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