徒然なる戯言:その1
先日一年振りに投稿をしたところ、以前の投稿を御覧になっていらした方々からメッセージを頂き、嬉しいと同時にブログに盛んに言いたい放題を書いていたのが、もう10年以上も前になることに気が付きました。昔から「三歩歩けばさっき言った事と逆言う奴」ということを言われて来ましたので、きっと今は10年前にこのブログに書いたこととは全く逆のことを言うに違いありません。
有り難く頂戴したメッセージの中に、(昔は随分とヨイショしていた)調香師のクリストフ・ロダミエルの名前を目にして思い出したことがいくつかあります。2005年に彼と初めて出会った頃は、強い自己主張をする調香師がまだ少なかったので、自分勝手な生き方をしてきたアーティストだった自分としては一種の親近感を持ったことを覚えています。非常にオールドファッションな香水業界に居ながら、型にはまらない考え方をする点にも好感を持ちました。当時はまだ三十代の若手調香師だったので、荒削りな調香スタイルが魅力の一つだったことも確かですが、それが技術的な未熟さとセンスの欠如から来る欠点かもしれないという疑問はありました。彼の強い自我が企業の枠に収まりきれずにIFFを飛び出した時も、その勇気に天晴れとばかりに声援を送ったりもしましたが、香料企業の恵まれた環境無くして技術とセンスに磨きをかけることが非常に困難であろうことを心配した記憶があります。独立した後のクリストフ・ロダミエルはあまりパッとした業績も無く、才能とセンスのあるミレニアル世代の調香師達が登場し始めた現在は、残念ながら彼の活躍の場もあまり残っていない気がします。
そう言えば、クリストフ・ロダミエルと出会った頃と同じ時期に、チャンドラー・バールという当時業界で話題になっていた香水評論家を名乗る作家が、インタヴューの為に数度私のアパートに訪れました。そのチャンドラーが、7、8年前に世界で初めての嗅覚芸術センターのディレクターに就任した際に、是非手伝って欲しい事があると言って連絡してきた時には、嗅覚芸術センターなんて大仰なものは世間が必要とするものでもないし、そんなものは数年で消えるだろうと内心は思っていましたが、2年もしないうちにその美術館の中での彼の居場所は消えてしまいました。その後は業界での出番も徐々に減って行き、最近はドサ回りのようなイベントでたまに彼の名前を聞くだけ‥ 時代の変化を感じさせられます。
最近思うことなのですが、香水の世界はいつまでもオールドファッションで良いのかもしれません。「型にはまらない」とか「世界で初めて」みたいなコンセプトが定着しない業界なのでしょう。
(冒頭の写真はこの記事とは全く関係がありませんが、私の関わっているアラボオンファイヤーの新作Hossegorに因んで、南仏大西洋海沿いのオスゴーの海岸の写真をアップしました。)
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